「生き物に共通する大切なこと」を教えてくれるガーデニング
子育て、人財育成に通じるガーデニング
三浦半島に移住して、趣味が一つ増えました。ガーデニングです。
100種類ほどの草木の日々の変化を楽しみ、成長に驚き、毎日植物と対話する、そんな日々を愉しんでいます。こんなにのめり込むとは、自分でも予想していませんでした。三浦半島の豊かな自然に心を惹かれ刺激を受けた事と、子供達が社会人になって独り立ちして、夫と二人の家庭になった事が影響しているのかもしれません。因みに、子供達が巣立ち、夫婦二人になった家庭を米国では、『Empty nest』と言ったりします。
私にとってガーデニングは、3つの意味を持っています。
一つ目:心地よい空間を創る
自然が人間に与える力、草木の緑が心を癒す力は、物凄いですよね。緑に囲まれた空間で、植物と対話する時間を持つことは、私にとって、最高の精神の浄化に繋がっています。
二つ目:日々の成長を身近に感じる
私は、子育てを経験して、「子育て」とは「親をも育てる」ことなんだと実感しました。育児と仕事は、時には両立させるのを難しく感じたり、バランスを取るのが厳しい局面もありました。子育て真っ最中の時は、毎日を乗り切るのが精一杯という時期だったようにも思います。でも、『Empty nest』になってみると、日々成長する子供達を身近で感じたあの日々が、どれだけ貴重な時間だったのか、どれだけ私の人生を豊かにしてくれていたのかを感謝とともに心から懐かしく感じるんです。やっぱり、身近に成長する存在があると、自分も成長できますしね。という訳で、今は、100種類の植物達が、私にとって子供のような存在なんです。
三つ目:植物を育てることで、生き物に共通する大切なことを学ぶ
富士通時代、事業を推進する上で、組織マネジメントや人財育成に携わり、「人財育成」に関わることは「自分が成長する貴重な機会を頂く」ことにも通じるのだと、実感してきました。そして、ガーデニングにのめり込むようになって、植物を育てることは、生き物に共通する大切なことを学ぶ貴重な機会になっていることに気づきました。
人と同じように、植物も新しい環境に馴染むためには、それなりの時間を要します。植えられた場所の気候や日当たり、土の質、風の強さなど、そういった環境を受け入れ、その環境の中で植物自身のペースで成長できるようになるのに、少なくとも2-3年かかるんです。正に、人間と一緒ですね。
私は、庭に植える植物との出会いを一期一会だと思っています。偶然に、あるいは、お店で出会って心を惹かれ、家の庭に植えることになる。そうやって植えた木や草花が、1年、2年、3年と時を重ねるうちに、ある時点から成長速度を速めたり、花が咲き始めたり、実がなり始めたりすると、ああ、この植物は家の環境に馴染み始めたんだな、と安心します。そういう姿から、人を育成する時の、そして自分自身に接する時の大切なことを教えられている気がします。
しかも、植物は自分では動けないから、人間よりも、ある意味で強いんですよね。家は海風が当たる環境なんですが、そのような厳しい環境に置かれると、木は樹皮を固くしたり厚くしたり、時間をかけながら自ら環境に適応していく。そういう姿を見ていると、本当に自然のすごさを感じてしまいます。
「陰の見定め」
私が好きな園芸家に、ポール・スミザー(Paul Smither)という方がいます。スミザー氏は、イギリス生まれで、英国王立園芸協会ウィズリーガーデンで園芸学とデザインを学ばれ、日本の豊富な原生植物に魅了されて来日された方なんです。その土地の風土や歴史、環境条件に合う植物や材料を基本にして、人にも自然生態系にもやさしい持続可能な環境づくりを目指しているところが素晴らしいと思っています。
スミザー氏が園芸について語られた色々な言葉を聞いて、私がいつも感心させられるのは、その想いや考え方が人間にもそのまま当てはまる、と思える本質を突いた内容だということなんです。スミザー氏の言葉に触れる度に、やはり植物を育てることは、生き物に共通する大切な事を学ぶことなんだ、と感じます。
スミザー氏は、ある時、こう言われました。
「植物を植える時に一番大切なことは、『陰の見定め』だ」
「植物には、日向を好む植物もあれば、日陰を好む植物もある。
木漏れ日の環境が最適な植物もある。
その性質を理解して、植物が好む環境に植えることが何よりも大切。
日陰を好む植物を日向に植えたら、植物にとっては拷問と一緒。」
人間に対しても、全く同じことが言えるのではないでしょうか?
組織のマネジメントにおいて、一人ひとりのメンバーが最も活躍できるポジショニングを実現するためには、この『陰の見定め』が何にも増して重要なのではないかと思います。
また、自分に対しても同様。
自分は、どのような環境に身を置くことが自分にとって最も幸せと感じるのか?
自分に対する『陰の見定め』は、自分らしい人生を創るうえでの重要なポイントの一つだと思います。
ギンバイカ と ジャカランダ
100種類ほどある我が家の植物は、その一つ一つが私にとって大切な存在なのですが、本日はその中でも特徴的な存在の2つを紹介します。
ギンバイカ(Myrtle)
冒頭の写真がギンバイカです。これは、6年前に庭を創った最初の時期に植えた我が家の最古株。
地中海沿岸原産。ハーブとしては、マートルの名前でもよく知られています。ギンバイカは、古代ギリシャを始めヨーロッパでは神聖な木とされてきました。「祝いの木」とも言われ、ヨーロッパでは昔から結婚式で使用されてきた木です。秋には、黒紫色の実がたわわに実り、メジロやヒヨドリが実を食べに毎日来てくれます。
ジャカランダ(Jacaranda)
そして、上の写真が、ジャカランダです。カエンボク(火炎木)、ホウオウボク(鳳凰木)と並んでシウンボク(紫雲木)と呼ばれ、世界三大花木の一つとされています。ある方に勧められて、一昨年に植えました。昨年は、一年様子見していたようで花は咲きませんでしたが、今年、我が家に来て初めて、紫色のみごとな花を咲かせ、庭を鮮やかにしてくれました。
kaoru.chujo@sowinsight.com (中条 薫)