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「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」が公開されました

2024年4月19日に、経済産業省と総務省から、「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」が公開されました。私は、富士通で本部長としてAI事業の立ち上げを行い、その後、AI倫理の推進に携わっていましたので、富士通時代は時田社長の代理として総務省の「AIネットワーク社会推進会議」に出席し、AI利活用ガイドラインの策定に携わりました。現在は、経済産業省の「AI事業者ガイドライン検討会」の委員として、AI事業者ガイドラインの策定に関わっています。

 

昨年来、生成AIが社会に大きな影響を与えている中、昨年(令和5年)の5月に実施されたAI戦略会議で既存のガイドラインに関して必要な改訂などを検討する必要性が示されたことを受けて、経済産業省及び総務省が合同で既存のガイドラインの統合・アップデートが進められてきました。広範なAI事業者向けの統一的で分かりやすいガイドラインを目指して取りまとめられたのが、昨日公開された「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」です。

https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004.html

 

私がここ数年委員として携わってきた経済産業省のAI事業者ガイドライン検討会(旧AI原則の実践の在り方に関する検討会)は、多様な視点を持つメンバーで構成されています。アカデミアの先生方、AIを開発・提供するIT企業やスタートアップの有識者、消費者視点に関する有識者や企業経営に携わる有識者などが委員として検討会に参加し、多面的な議論や意見交換が行われてきました。私は富士通でAIに携わった経験、その後に社外取締役として企業経営に携わっていること、そしてジェンダー・ダイバーシティも考慮されたのだと思いますが、主には利活用企業の経営者視点を期待されて、2021年に経済産業省からの依頼で委員になりました。これまでの検討会では非常に興味深い意見が多々だされ、私自身多くの学びを得ました。加えて、多様性の重要性とその効果を実感し続けてきました。

 

日本企業の生成AIへの取り組みは海外に比べると遅れているという話もありますが、私は、昨年の後半以降、取り組みが変化しつつあると感じています。一点目は、経営者に関してですが、経営者自身の興味関心が高まっていること、そして、経営者自身が使ってみてポテンシャルを掴むことが検討や活用の加速に繋がっていると感じていることです。

 

二点目は、ガイドラインに関してです。以前からAIを開発・提供する企業ではAI倫理やガイドラインに取り組まれていましたが、生成AIに関しては、活用側の企業で自社の活用ガイドラインの作成と周知が進んでいることで、これは大きな変化だと感じます。

 

取り組みが進むにつれて重要になるのがガバナンスです。特に利活用側では、まだAIガバナンスに取り組んでいる企業は多くないと思いますので、簡単にあるべきAIガバナンスについて触れたいと思います。

重要なポイントを3つお話すると、一つ目は、経営層と現場によってアジャイルにガバナンスを行うということです。この図は、総務省,経済産業省から公開されている「AI事業者ガイドライン」案に記載されている図に中条が加筆したものですが、ポイントは、経営層レベルと現場レベルでの二重ループでアジャイルにガバナンスをしていくこと、そして、経営層で取り組みのゴールやポリシーをしっかり設定することだと思います。

 

二つ目は、ガバナンスのスコープを拡げることです。現在多くの企業ではESG観点でガバナンスが行われていると思います。そこにAI特有のリスクの視点を追加して、ESG+Aに広げる。具体的には、安全性、公平性、プライバシー、セキュリティ、透明性・説明可能性、アカウンタビリティの観点を盛り込むことが必要になります。

 

三つ目は、リスクベースアプローチを採用することです。AIを開発する企業、システムにAIを組み込んで提供する企業、AIを利活用する企業それぞれで必要なガバナンスは異なりますし、どのような目的でAIを活用するかによってもリスクの大きさは異なります。ですから、一律でがちがちなガバナンスでAIの活用が阻害されないよう、AIを活用しビジネスを加速/拡大するための適切なガードレールの設置にすること、リスクに応じたガバナンスであることが大切だと思います。

 

「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」にはAIガバナンスのあり方についても詳しく記載されていますので、是非参考にして自社に適したAIガバナンスを構築していただきたいと思います。

 

kaoru.chujo@sowinsight.com (中条 薫)

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