人は何故アンコンシャスバイアスを持つのか?
今週、世界経済フォーラムから発表された『ジェンダー・ギャップ指数 2022』。
今年も、日本は、146か国のうち116位、相変わらず先進7か国(G7)で最下位と残念な結果でした。
ウェルビーイング(Well-being)が向上する活気のある社会を作っていくためには、ダイバーシティ推進は不可欠。そして、特に日本では、ダイバーシティ推進を加速していくためには、制度面の取り組みに加えてアンコンシャスバイアスへの対応が不可欠なんです。
そのような背景があり、現在、色々な機関や企業でアンコンシャスバイアスについての意識が高まり、取り組みが加速されています。私も、協業のお声がけを頂く機会や、アンコンシャスバイアスについてお話することが増えています。
人は何故アンコンシャスバイアスを持つのか?
みなさんは、このような疑問を持たれたことはありますでしょうか?本日は、ここにフォーカスをあててお話したいと思います。
“アンコンシャス”なバイアスなので、意識と無意識に大きく関係します。
人は毎日の生活の中で9割以上を無意識に左右されています。心理学者によっては、95%、あるいは、99%という方もいらっしゃいます。無意識についての研究ではフロイトが有名ですが、無意識に関しては100年以上も前から多くの心理学者たちによって研究されて、今では、より実践的な見方がされるようになってきています。
ノーベル経済学受賞者のダニエル・カーネマンさんは、人は二つのシステム、つまり、「速い思考で自動的な働きをする」システム1と、「遅い思考で制御された働きをする」システム2を持っているという考え方を示しています。システム1が無意識の働き、システム2が意識の働きです。
また、NLPと呼ばれる心理学では、人の脳をコンピューターのソフトに喩えて、無意識をOS、意識をアプリとみなす考え方を示しています。そして、意識は言語をベースとしたアプリであって、一方のOSに相当する無意識は、その人が小さい時から積み重ねてきた経験によって作られた感情をベースとしたプログラムであるという解釈をしています。
人は、全ての情報を五感を通じて脳に伝えますが、五感が脳に伝える情報量は、なんと、毎秒1100万bitもあると言われています。でも人間が扱うことのできる情報量は、毎秒16から50bit程度なので、OSに相当する無意識が、ごく一部の情報のみを選択して情報量を大きく減少させていると考えられています。
そして、情報を選択する際に使われている能力が「分類」なんです。
目にするすべてのものや、耳にはいる全ての音をそれぞれ個別に扱っていては、例えば危険が迫ってきた時にも瞬時的な判断ができないですよね。ですから、無意識がその人にとって重要だと思われる情報だけ残して曖昧な違いや微妙な差異を分類によって丸めてしまう。この「分類」という能力は人が生き延びるために必須の能力と言えるんです。分類によって、身の周りの世界を単純化することで情報量を減らして脳で処理ができる。でも一方でその分類によっては、認識が歪められてしまうことが発生します。
無意識が自動的に行う分類で引き起こされる歪み、偏見が、アンコンシャスバイアスなんです。心理学的な認知の誤り、そして、ある種の集団、特に人種やジェンダーに対する偏見が挙げられます。
人が生き延びるために不可欠な「分類」という能力によって引き起こされてしまう歪みが、アンコンシャスバイアスなのですね。無意識だから自分で気づくことが難しいけれど、人は生きていく上で、誰もがアンコンシャスバイアスを持ってしまうということを認識することが、アンコンシャスバイアスに取り組む第一歩と言えるのでしょう。
kaoru.chujo@sowinsight.com (中条 薫)